井之頭五郎という中年男性がひとりでふらっと飲食店に入り、脳内であーだこーだとメニュー選びに悩んだ末、ひたすら食べまくる……。言わずと知れた話題の作品『孤独のグルメ』のことだ。原作はマンガだったが、松重豊主演でドラマ化されるとシーズン4まで放送される番組に。その影響か、最近ではドラマに登場した飲食店を訪れて「孤独のグルめぐり」を楽しむ人までいるらしい……。
今回は『孤独のグルメ』大ファンでありながらお店巡りは初心者のライター・ヒロサワが、「グルめぐり」の達人であり、ミュージシャンとして活動するDJ SASAさんを直撃。お店探訪に同行しながら、その楽しさや極意を聞いてみることにした。
1日で5軒まわったことも
ここはJR中央線の阿佐ヶ谷駅。駅前で何やらキョロキョロしている人を発見!
と思ったらこの人がDJ SASAさんだった。全国で食べ歩きをしながら、『孤独のグルメ』のロケ地めぐりをしている達人だ。
——今日はよろしくお願いしますっ。
SASA:どうも〜、今日はいっしょにロケ地めぐりしてくれるんですよね。よろしく!
——実は『孤独のグルメ』が大好きなんですけど、出てきたお店には行ったことがなくて……。だから、うれしいっす!ところで、そもそもロケ地めぐりを始めたきっかけは?
SASA:じつは、ドラマの『孤独のグルメ』を見始めたのもシーズン3ぐらいからで、そこまでコアなファンではなかったんですよ。むしろ、ロケ地めぐりをするようになって、シーズン1からドラマを見返して。
——そういうパターンもあるんですね。
SASA:ちなみに今日は、ロケ地めぐり33軒目なんすよ。
——SASAさんだけに33!記念日じゃないですか。光栄です。
SASA:今日は、シーズン4の第8話に出てくる阿佐ヶ谷「YOHO's cafe Lanai」に行きます。おっ、この道、五郎さんが歩いてましたよね〜。
▲ドヤ顔で行き先を指さすSASA氏
——ホントだ! 1回店を通りすぎちゃって、戻ってくるんですよね。
SASA:そうそう。おっ。店発見! 写真を撮らなきゃ。
▲本日の目的地、阿佐ヶ谷「YOHO's cafe Lanai」に到着。お店へ入る前に、まずは店構えをケータイで押さえておくのがSASAさんスタイル
——(ここからは店内でインタビュー)ところで、最初に行ったお店はどこだったか覚えてます?
SASA:シーズン3の第1話に出てくる赤羽の「川栄」です。鰻とほろほろ鳥が食べられるところ。2013年の夏に友だちと「赤羽飲み」をしていて、数軒のお店をハシゴしてたんですよ。その中に、たまたま「川栄」が入っていて。みんなで「そういえばここ、『孤独のグルメ』に出てたよね」って盛り上がるみたいな感じ。たしか、オンエアされた2週間後ぐらいに行ったのかな。
——滑りだしとしては最高のお店ですね。そこからロケ地めぐりが始まったと。
SASA:いや、そのときはまだロケ地めぐりをしてる感覚じゃなくて、次の店に行くまで1年ぐらい間が空いちゃうんですよ。
本格的に「ロケ地めぐりをしよう!」と思ったのは、2軒目に行った福岡の「味の店 一富」(シーズン4、特別編)のときかな。たまたま店に着いたのが23時ぐらいだったから、ご主人ともお話できたんですけど、そのときにドラマ収録の裏話なんかも聞かせてもらって。特別編がオンエアされたのは、たしか昼すぎだったと思うんですけど、放送中から予約の電話がジャンジャン鳴って大変だったって話を聞いて、テレビの影響力を思い知りました。
▲阿佐ヶ谷の「YOHO's cafe Lanai」の店内にて。『孤独のグルメ』の影響で、注文するときはつい五郎さんと同じポーズをやっちゃうらしい
——福岡に行ったのはいつ?
SASA:2014年の9月。特別編が8月9日にオンエアされたので、その1カ月後に行ったことになるのかな。それから、いろんなお店をまわるようになって、今日が33軒目!
——ってことは、9カ月間で32軒まわってるんですね。すごい!!
SASA:1日で5軒まわった日もあるんですよ。最初、11時に小竹向原の「まちのパーラー」(シーズン3、第9話)に行ったんですけど、たまたま臨時休業で。ここは後日またリベンジしたんですけどね。結局、1軒目は池袋西武の屋上のさぬきうどん屋へ行きました。漫画の方で、五郎さんがデパートの屋上でうどんとフランクフルトを食べる回があったんで。
予約必須!予約ナシならなるべく開店時間を狙え
——(ここでテーブルには、注文したオックステールスープが運ばれてくる)そうこうしてるうちに、来ましたよ。本日の最大の目当てが。
SASA:うおー美味そうっすねー。
▲井之頭五郎も食べた「オックステールスープ」(1,150円)がテーブルに!
▲ドラマですでに見ていても、山盛りの生姜の量にはビックリ!
——で、1日5軒コースの2店舗目は?
SASA:えーっと、池袋から移動して十条の「だるまや餅菓子店」(シーズン2、第10話)で、和栗のかき氷を食べて、14時に開店する鶯谷の「鳥椿 鶯谷朝顔通り店」(シーズン3、第8話)へ移動したのかな。そこでアボカド鶏メンチとハムカツを食べたあと、18時から予約していた浅草橋の「居酒屋まめぞ」(シーズン4、第7話)で一杯。
そうしたらね、たまたま隣に『孤独のグルメ』ファンの親子がいたんですけど、店で意気投合して「ここから新小岩って近いよね」ってことで、いっしょに「四川家庭料理 珍々」へ行ってきました。
▲「うわーたまらん!意外とやさしい味ですね!」としゃべりながら手を止めないSASA氏
▲柔らかい牛テール肉は生姜との相性もバツグン。ああ、来てよかった……
——ロケ地めぐりするだけじゃなくて、ハシゴして仲間まで作ったんですか! でも、『孤独のグルメ』に出てきたお店は、オンエアされると必ず行列ができるって聞いたことがあるんですけど。
SASA:行列に並んだことはないな〜。あ、箱根の「いろり家」(シーズン4、第3話)に行ったときは、お店が11時オープンのところを、10時50分に到着したら、先客が4人ぐらいいましたけど、店が開いたらすぐ入れたので。
▲肉を半分くらい食べたところで、スープにごはんを入れて、生姜&しょうゆをかけて食べるのがロコ流
——行列に並ばずに『孤独のグルメ』のロケ地めぐりをするときの必勝法を教えていただければ……
SASA:まず、必ず行きたいと思った店は、2週間ぐらい前に予約を入れちゃいますね。俺「趣味は予約」って公言してるくらいなんで(笑)。あとは、予約を入れずにお店に行く場合は、なるべく開店時間には行くようにしてます。先手必食!
グルメ投稿サイトの点数なんか気にしなくってもいい
——では、これまで33店めぐってきたお店の中から、SASAさんがもう1回行きたいベスト3を教えてくださいっ!
SASA:んーと、第3位は「四川家庭料理 珍々」かな。「じゃがとろ」がうまかった!中華風マッシュポテトみたいな感じで餡がかかってるんだけど、うまいのなんのって。今まで、全国でいろんな中華料理店に行ったけど、初めて食べたからインパクトあったなぁ、あれは。
——第2位はどこでしょう。
SASA:第2位は東中野の「パオ・キャラヴァンサライ」(シーズン3、第5話)。「カラヒィ」っていう羊の鉄鍋を頼んだんですけど、そのときにいっしょに食べた「ナン」が本当においしくて衝撃を受けました。普通の「ナン」とは全然別物で、すごく固い。ちぎるのに力がいりましたもん。でも、歯ごたえがあって最高っていうね。
——では、栄えある第1位は?
SASA:第1位は、ボクがロケ地めぐりをするきっかけにもなった福岡の「味の店 一富」です。「鯖ごま」「鯵納豆」「レモンサンド」なんかを食べたんですけど、中でも「若どりスープ炊き」がとにかくおいしくて。水炊きのスープはしっかり味ついてますけど、このスープはすごくあっさり味なんです。やさしさが染み入る感じでうまかった!
▲これがそのときに撮影した「味の店 一富」の「若どりスープ炊き」。飲みのシメには最高
——逆に、期待ハズレだった店もありました?
SASA:33店舗中、1軒だけ全然印象に残らなかった店はありましたね。でも、そこだけ。あとは全部おいしかったですよ。
——それはちょっと意外でした。
SASA:ロケ地めぐりを始める前は、グルメ投稿サイトの点数を気にしてたんですよ。でも、いろんなロケ地を食べ歩いてみたら、点数がそこまで高くない店も何店かあったのに実際に食べたらどこもおいしくて。以来、口コミサイトの点数なんか気にしなくてもいいってことに気付かされましたね。
▲五郎さんも食べたアサイーボウルを手に、うれしそう♪
——なるほど。他人の評価に振り回されすぎちゃダメだと。
SASA:そのとおり。大切なことを教えてくれた偉大な作品ですよ、ほんと。
——これからもロケ地めぐりは続きそうですか?
SASA:もちろん! きっと、コンプリート目指しちゃうんだと思います(笑)。
▲DJ SASAさんの最近のリリース作品。『DJ SASA presents泡盛大全集 〜島気分〜』(左)と『金爆人(きんばくんちゅ)』(右)。要チェック!
お店情報
YOHO's cafe Lanai
住所:東京都杉並区阿佐谷南2-20-4 ハウスポート阿佐ヶ谷ビル1F
電話:03-6383-1298
営業時間:平日11:30〜14:30 17:30〜22:00、土日祝13:00〜15:00 17:30〜22:00
定休日:月曜日(月曜祝日の場合は火曜日)
お話の中に出てきたお店情報