【開発期間15年】北海道のソウル漬物「にしん漬け」の作り方を田中青果に聞いてきた

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北海道を拠点に食べ歩き、メシ通レポーターの裸電球です。

今日は私の愛してやまない、北のソウルフードを徹底的にご紹介します!
お酒との相性たるや、恐ろしいレベルです。

北海道民のDNAレベルまで刷り込まれた、伝統の味!

 

その名も「にしん漬」

 

北海道と共に歩む漬物

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北海道では各家庭で作る冬の大定番で、
スーパーでも、当たり前に売っている、
とってもポピュラーな漬物なのです。

しかし、北海道から一歩出ると……。
あれ? ウソでしょ?

なんでこんなに知らない人が多いの!

ぜひ北海道以外の方にもこの味を楽しんでいただきたい……。

 

そこで、今回は「にしん漬け」の魅力に迫ります。
さらに「にしん漬け」のプロ、田中青果から

ななななんと、
作り方を教えてもらいました!

「買う派」も「作る派」も必見ですよ!

 

ANAのファーストクラスで提供される実力

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「にしん漬け」は取扱いの都合上、難しいものの、
田中青果の漬物は、
ANAのファーストクラス・ビジネスクラスの機内食
2018年3月~5月の間、提供されるという実力!

すごいでしょ?
そんなお店に「レシピ教えて」って言った私、誰か褒めて。

 

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ものすごく広いこの大地。
北海道」と名前が付けられてから、今年で150年という節目を迎えました。

その歴史は、「にしん漬け」と歩んだといっても過言ではありません。
各家庭で守ってきた味があり、思い出があり……。

「おばあちゃんの作った『にしん漬け』が日本一」

北海道民が集まると、
自分ちのにしん漬け自慢が止まりません。


さて、「にしん漬け」のプロフェッショナルを訪ねて。
やってきました、札幌から150キロほど、海沿いのマチ・留萌(るもい)市!

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留萌市はかつてにしん漁で栄えたマチ。

おいしいにしんが手に入るということは……。
おいしい「にしん漬け」に出合えるということ!

しかも今回お邪魔するお店は、
もともと青果店なので、漬物に欠かせない野菜まで最高のもの!

条件はそろいました。

留萌市の田中青果で聞いてみた

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おお!
お店の外観にもしっかり刻まれた「にしんづけ」の文字。

田中青果の作る「にしん漬け」は、
味にうるさい北海道民にも熱烈なファンの多いお店です。

広い北海道、なかなか留萌市まで来れない人は、
デパートなどで開催される催事を心待ちにしているんだとか。

これは期待が高まります。

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▲やん衆にしん漬け 1kg 1,600円


神々しく見えますね。
袋にどさっと1キロ入った感じも、実に北海道らしい!

みなさん、これを買って、晩酌するんですよ。
「にしん漬け」がある日は、残業している場合ではありません。

私なんか、16時からソワソワが始まります。

 

これが田中青果の「にしん漬け」だ!

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「にしん漬け」に使う材料をざっくりとご紹介。

  • 身欠きにしん
  • キャベツ
  • 大根
  • ニンジン

これらを塩にザラメ、米麹や鷹の爪と漬けるのです。

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身欠きにしんのうま味と野菜のシャキシャキが、
目の前のお酒を蒸発させます。

飲んでも、飲んでも、止まりません。
(本当にこの感覚、体験してほしい w)

 

教えて……くれないですよね?

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田中 美智子さんです。

田中青果に嫁ぎ、血のにじむような研究の末、最高の「にしん漬け」を誕生させました。

その開発期間、なんと15年ですって。

そんな方に、これからする質問は。
まさに愚の骨頂!

ええっと……。
いや、ダメ元なんで、聞き流してくださいね。

「『にしん漬け』の作り方教えてください」

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「もちろん!」と笑顔の田中さん。
うそでしょ?

 

え? え?
ホントに良いんですか?

聞いてみるもんだ!

 

「食べる文化」を後世に残したい

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作り方を教えてくれた田中さん。
そこには、深い思いがありました。

じつは、この「にしん漬け」。

存続の危機なんです。

住宅環境や家族構成の変化から、
「にしん漬け」を作る家庭が激減。

親が食べないと、子は食べなくなり、
こんなにおいしい漬物を「食べる文化」がなくなってしまうのです。

そこで田中さんは、自らのお店で販売するだけでなく、
「にしん漬け」を守るために、おいしさを伝えるために、
プロの技を教えてくれるというわけです。

もう、私、
留萌に足を向けては寝られません。

 

「にしん漬け」の作り方大公開!

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それではイメージが膨らみやすいよう、
田中青果の漬物工場にお邪魔させていただき、
その写真を見ながら紹介させていただきますね。

 

【にしん漬け 約10キロ分】

 

もう一度言います、約10キロ分です!!

 

【材料】

  • キャベツ 7kg
  • 大根(干したものか塩漬けしたもの) 3kg
  • ニンジン 1~2本
  • 身欠きにしん(本乾) 500g
  • 塩、ザラメ、米麹 各260g(野菜の総分量に対して2.6%)
  • 鷹の爪 適量

 

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①キャベツは「寒玉」を大き目にザクザク切るべし!

 

ポイントは寒玉キャベツ(冬キャベツ)を使うこと。
これだけでも味わいが全然違います。

大きめにざく切りにして、水を通すように洗うといいそうです。

 

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②大根は干すか、塩漬けしたものを使うべし!

 

干したほうが甘みが増すんですって。
干せない場合は塩漬けにして、水分が抜けたものを乱切りにしてください。

田中青果では、それぞれの材料を事前に漬けるそうです。
本漬けする前にそんな工程があったとは。
おいしさのヒミツですね。

 

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③本乾の身欠きにしんを「米のとぎ汁」で戻すべし!

 

本乾とは、字の通り、完全に乾いたカチカチのにしんのこと。
乾燥がしっかりされていないものを使うと、生臭くなってしまうので要注意!

うろこはなんと、「荒め」に取り除くのが良いそうです。
少し残っているくらいがベストなんて、奥が深い。

さらに、「米のとぎ汁」で1~2日戻すのもポイント!
北海道の人でも水で戻している家庭が多いようです。

米ぬかでにしんを戻すことで、「発酵のスターター」になるんですって。

プロの技を盗んじゃいましょう。

 

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④仕込み分量は食材の2.6~3%

 

塩、米麹、ザラメをそれぞれ、この分量用意する!
これが黄金比なんですって。

いや~、すごいこと聞けたんじゃないですか?

 

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⑤重さを変えて漬けるべし!

 

たるにキャベツ、大根、にしん、千切りにしたニンジン、刻んだ鷹の爪、調味料の順で詰めます。


「層」にしていくんですね。

 

たる、お持ちですよね?

 

15kgの重しで漬けはじめ、
10日ほど経ったところで、10kgに。
さらに10日ほど経ったところで5kgに。
そのまま保存!

日数に合わせて調整することがポイントです。
約3週間ほどで食べられるようになります。

 

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⑥水は絶対に捨てるべからず!

 

漬けていくと、このように水分が出てきます。
これを「捨てる人」がいるんですって。

それは絶対にやってはいけないNG行為!
たるから流れ出る分は、そのままに。
ヒタヒタの状態でも全く問題ありません。

むしろこの水分は、
食材を悪い菌から守ってくれているそうです。

 

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⑦かき混ぜるなかれ!

 

ようやく完成しても、ここで台無しにしてしまう人が!
底からかき混ぜると、手の温度が伝わり、発酵が進んでしまいます。

気になって手で混ぜてしまう人、多いんですって。

せっかく「層」になっているので、上から順に。
食べる分だけを少しずつ混ぜるのがポイントです。

 

最高の「にしん漬け」を召し上がれ

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田中青果の亡くなったおばあちゃんが、
「にしん漬けの名人」と呼ばれていたそう。

お店が目指したのはその味。

しかし、残されたレシピは、
「塩を手のひらで何杯」など、完全な目分量。

何年も何年もかけて、全国に流通できるほどに育てたのが、
田中 美智子さんなのです。

正直、ここの「にしん漬け」を食べると、
「自分でこんなの作れない」と思ってしまいます。

(作り方を紹介しておいてなのですが……)

 

皆さんも「にしん漬け」のとりこになって!

ホント、驚きますから、「にしん漬け」のおいしさ。
どうですか? 食べたくなってきたんじゃないですか?

日本酒、焼酎、ビール。
何でもガッツリ合いますよ?

ということで。
みなさん、次のシーズンはおいしい「にしん漬け」、作っちゃってください。

そして、田中青果の漬物を是非!
お取り寄せ、可能です!

 

お店情報

丸夕 田中青果

住所:北海道留萌市栄町2丁目3-21 
電話番号:0164-42-0858 
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定休 
ウェブサイト:http://www.yanshu-tanaka.co.jp/

 

書いた人:裸電球

裸電球

北海道を拠点に食べ歩き。CATVでグルメ番組のレポーターを担当したことをきっかけに、ハシゴ酒が趣味となる。入りづらいお店に突撃するのが大好き。現在はフリーで、映像制作とライターの仕事をしている。

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