「食材を腐らせずに長期間保存できたら……」
皆さんもこんな夢みたいなことを一度は考えたことはありませんか?
というのも最近……
一度の買い出しで食材をまとめて購入しがちなんです。
外出を控えて買い物の回数を抑えていった結果、一度に購入する食材の量が多くなってきているんです。
なんとか効率よく食材を使い切るために、毎日献立のやりくりを頑張っているものの、どうしても賞味期限が切れてしまう食材が出てきてしまうんです。
そんな悩みを『メシ通』の編集者さんに話していたところ……
「うまく冷凍庫を活用できると良さそうな気がしますね。料理に詳しい方に徹底的に教えてもらいましょうか」と、トントン拍子で話は進んでいき、料理研究家の樋口直哉さんにお話を伺うことに。
前置きが長くなりましたが、今回は料理研究家の樋口直哉さんに「食材を美味しく保存するための冷凍法」について伺っていきます!
※取材はオンラインにて実施しました。
そもそも冷凍するとどんな現象が起きるの?
キンマサタカ(以下、キン):樋口さん、今日はよろしくお願いいたします。
樋口直哉(以下、樋口):はい、お願いします。今回は冷凍に関するお話ができればと思っていますが、知識の有無で冷凍庫の使い方も変わってくると思いますので、色々とお話できればと思います。
キン:頼もしいです! ちなみに樋口さんは調理師学校出身ですよね。冷凍に関する授業などはありましたか?
樋口:実は、調理師学校では冷凍に特化した授業はないんですよ。食品加工に関する授業とかはあるんですけどね。
キン:そうなんですか。冷凍に関する知識は、プロアマ問わず自力で勉強していく必要があるわけですね。
キン:まずは、食材を冷凍するとどんな現象が起きるのか教えていただきたいのですが、冷凍すると水分が抜けるって言いますよね。
樋口:はい、冷凍のメカニズムを簡単に説明すると、まず食材の中の水分が凍っていきます。そして、周囲の小さい氷や水分を抱え込んで体積を増やして「氷の結晶」に変化していきます。
キン:なるほど。
樋口:この膨張した氷の結晶が食品の細胞膜や細胞壁を壊してしまうので、食材を解凍したときに水分が流れ出てしまうわけです。
冷凍を味方につけるために重要な「最大氷結晶生成帯」とは?
樋口:ちなみに冷凍技術を味方につけるためには、「最大氷結晶生成帯」という言葉を理解することが重要になってくるのですが、この言葉はご存知ですか?
キン:いえ、はじめて聞いた言葉です。
樋口:最大氷結晶生成帯について簡単に説明しますと、食品を冷凍する過程で氷結晶が大きくなりやすい温度帯の名称です。具体的には、マイナス1℃~マイナス5℃までの温度帯を指します。
キン:え〜っと……その最大氷結晶生成帯はなぜ重要なんですか?
樋口:要するに、氷結晶が大きくなるマイナス1℃~マイナス5℃の間を早く通過させてあげれば細胞に対するダメージが少なくなるので、食材の劣化を防げるんですよ。
キン:なるほど!!! いわゆる急速冷凍ってやつですか。
樋口:そういうことですね。冷凍するときも解凍するときも、最大氷結晶生成帯を早く通過させてあげることで、食材の品質は大きく変わってきます。
逆に言えば、タコやマグロのような細胞が強固な食材は、あえて一度凍らせることで柔らかくすることができます。日本に冷凍マグロやタコやイカの冷凍品が多いのは、輸送がしやすいという理由以外にもこの方が食べやすくなるからです。
意外と知らない正しい冷凍と解凍のやり方
キン:要するに早く冷凍にして早く解凍させるのが食材にとって良いわけですね。では、どうやって冷凍するのがベストなんでしょうか?
樋口:1番良い方法は、アルミ製のトレーに食材を重ならないようにのせて、ラップなどで蓋をしてから冷凍庫で完全に凍らせたあとに、冷凍保存バッグに入れて保存するのがいいですね。アルミトレーは熱伝導率が高いので、食材を傷めずに速く冷凍できます。
キン:そういえば、飲食店でも大きなアルミトレーを使って冷凍している記憶があります。
樋口:よくご存知ですね。ちなみにアルミトレーで冷凍すると、食材をバラバラに冷凍できるのも魅力です。食材同士がくっついて固まってしまい、使うときに苦労するなんてことがなくなるので、快適に冷凍食材を扱えるようになると思います。
キン:毎回冷凍して固まった食材を角にぶつけて強引に剥がしてました(笑)。
ちょっと面倒に思えますが、丁寧に冷凍することで後の手間がなくなると考えれば……全然アリですね。
解凍のやり方次第で食材の美味しさは大きく変化する
キン:では樋口さん、理想の解凍方法についても教えていただけますか?
樋口:これは食材によって異なってくるわけですが、例えばお肉や野菜などは凍ったまま加熱調理する方法がおすすめです。
キン:樋口さん……それはどういうことですか?
樋口:先程マイナス1℃~マイナス5℃の間を早く通過させることが重要だとお伝えしましたよね。なので、冷凍した食材をいきなり加熱調理してしまえば、解凍の際のダメージを軽減できるわけです。
例えば、冷凍した薄いトンカツは、解凍せずにそのまま揚げてしまった方がジューシーに仕上がります。もちろん材料によって向き不向きはありますが。
キン:確かに凍ったままのトンカツを揚げている飲食店もありますよね。あれは手抜きじゃなかったってことですか……。
樋口:そういうことです。あとは焼き肉屋さんの食べ放題に行くと、半解凍のお肉が出てくることがありませんか? 実は、お肉を美味しく食べる上では理にかなってるんですよ。
キン:マジですか……解凍が間に合わなくて手抜きをしてるのかと思ってました……。
樋口:ちなみに解凍方法には色々種類があるんですが、直接加熱調理>氷水解凍>流水解凍>冷蔵庫内解凍>常温解凍>電子レンジ解凍の順番を憶えておくと良いと思います。
例えば、薄切り肉などは、流水で半解凍状態にして一気に加熱してしまう方法がおすすめです。
キン:電子レンジでの解凍が最も優先順位が低いんですね。
樋口:個人的に電子レンジでの解凍は、最も推奨しない解凍方法ですね。レンジは食品中の水分子を振動させて発熱加熱する仕組みなので、高確率で解凍ムラが起きてしまいます。
樋口さん、冷凍してOKな食材を教えて下さい〜野菜編〜
キン:樋口さん、ここまで非常に勉強になりました! 明らかに冷凍に関する知識レベルが上がっている気がします。
樋口:あはは、それは何よりです(笑)。
キン:ではここからは、冷凍してOKな食材を聞いていきたいと思っています。「この食材は冷凍できるんだ!」と事前に分かっていれば、計画的なまとめ買いができて賞味期限切れも防げると思うので。
樋口:分かりました。
キン:では、まずは野菜から聞いていきたいのですが、どんな野菜が冷凍OKでどんな野菜が冷凍NGになるんでしょうか?
樋口:そうですね。分かりやすく言えば「サラダ(生)で食べたい野菜は冷凍NG」で「それ以外の野菜は基本的にOK」という感じでしょうか。
キン:生で食べる野菜以外は基本的に冷凍できるわけですね。
樋口:はい。野菜を冷凍する場合は、ある程度細胞が壊れるので、柔らかくなったり味が入りやすくなることを意識して冷凍すると良いと思います。
例えば、大根を煮物にするときは、一度冷凍した大根を煮物に使えば味が入りやすくなって時短になります。
キン:なるほど。冷凍することで生じるデメリットを逆に有効活用するわけですね! ちなみに、冷凍した野菜を効率よく調理する方法はありますか?
樋口:それこそ、解凍せずにいきなり加熱調理できる煮込み系の料理は相性が良いですよ。凍った野菜をそのままスープやカレーに入れて調理をすれば調理時間を短縮できますし、栄養素もスープに留まるので、逃さずに食せますから。
キン:これはかなり使えそうなテクニックですね!! 逆にサラダで食べようと思っていた葉野菜が消費しきれない場合は、冷凍してスープに入れてもOKということですね。
樋口:そういうことです。冷凍解凍のメリット・デメリットを意識しておくと良いと思います。
樋口さん、冷凍してOKな食材を教えて下さい〜お肉編〜
キン:では樋口さん、同様に冷凍OKなお肉について教えていただけますか?
樋口:そうですね、基本的にお肉は何でも冷凍できます。強いて言えば、厚切りよりも薄切りのお肉のほうがおすすめです。
キン:それはマイナス1℃~マイナス5℃の間(最大氷結晶生成帯)が長くなってしまうからですか?
樋口:その通りです。例えば、鶏むね肉や鶏ささみは元々パサつきやすいお肉ですが、そのまま冷凍解凍をしてしまうとさらにパサつきやすくなってしまいます。
そもそも、スーパーで売られているお肉の中には、一度冷凍されていたものを解凍して販売しているものがあるんですね。もちろんチルドで販売されている場合もあるので表示を見て確認してみてください。
キン:ほんとだ、解凍肉を含むって書いてあります。
樋口:なので、スーパーで解凍品のお肉を買って家庭で冷凍した場合は再冷凍になるわけです。この場合は劣化が大きくなってしまうので、冷凍の際に工夫をしてあげるといいですね。
キン:具体的にはどんな工夫をすると良いでしょうか?
樋口:例えば、水200mlに料理酒10ml、塩、砂糖を各10gずつ入れて混ぜたブライン液などで保水してから、密閉して冷凍してあげると良いですね。
※ブライン液とは、塩を溶かした水のことを指す言葉。肉類を保存するための手段の1つ。
キン:保水と密閉をすると何が良いんですか?
樋口:冷凍庫は乾燥している空間なので、長期間冷凍していると水分が失われてしまいます。冷凍庫の中で、食材が直接空気に触れると、凍った水分が直接蒸発(昇華)して、冷凍焼けという現象が起こります。
なので、保水と密封をしてあげることで食材の劣化や冷凍焼けを防げるわけです。
キン:全く気にせずにお肉を冷凍してました……。他にもおすすめのテクニックはありますか?
樋口:鶏むね肉で言えば、保水と同時に下味もつけてしまえば美味しく食べられると思います。解凍したときに味が入りやすくなるので。こうするとサラダチキンなんかは美味しく仕上がります。
また、同様に味噌やタレに漬けてからお肉を冷凍すると、味が入りやすくなることに加えて、冷凍焼けも防げるので2~3ヶ月は保存可能になるのでおすすめです。
キン:タレやブライン液などで保水しておくと、保存期間も伸びるんですね。
樋口さん、冷凍してOKな食材を教えて下さい〜魚介類編〜
キン:では樋口さん、魚介類で冷凍OKな食材も教えていただけますか?
樋口:まず魚介類は水分量が多い食材なので、あまり冷凍に向いていない食材ではあるんです。ただ、「干物や塩蔵品」は水分量が少ないので長期間冷凍しても味の劣化は少ないです。
キン:では、お刺身や切り身などの鮮魚は冷凍に不向きであると。逆に甲殻類などはいかがですか?
樋口:家庭で上手に魚介類を冷凍することは難しいのですが、すでに冷凍で販売されているシーフードミックスなどは非常におすすめですよ。
キン:樋口さんも冷凍のシーフードミックスはよく使うんですか?
樋口:はい、愛用してます。実は、魚介類に対する冷凍技術はかなり進んでいて、表面に氷の膜を付着させる加工がされているんです。なので、長期間冷凍しても乾燥による劣化を防ぐことができるんですよ。
加えて、新鮮なまま冷凍加工がされているので、かなり美味しく食べられると思います。
キン:シーフードミックスにそんな加工がされていたなんて……。
では簡単にまとめると、「干物や塩味の効いた焼き魚や冷凍品の魚介類」は冷凍に向いていて、「鮮魚や切り身など」は冷凍に不向きということですね。
「生鮮食品を冷凍する」と「冷凍食品を買う」ならおすすめはどっち?
キン:野菜・お肉・魚介類での冷凍推奨食材がわかったので、冷凍庫を有効活用できそうです! ただ、1つ疑問があるのですが質問しても良いですか?
樋口:はい、どうぞどうぞ。
キン:例えば、ブロッコリーって生鮮タイプと既に冷凍されているタイプがありますよね。やっぱり生鮮タイプを自宅で丁寧に冷凍したほうが良いんですか?
樋口:何を作るかによって異なるんですが、基本的にはすでに冷凍されているタイプを買った方が圧倒的におすすめです。
キン:え、冷凍されたタイプの方が良いんですか!? あれって産地もよく分からないし、やけに安いじゃないですか。そもそも冷凍食品って安全なんですか?
樋口:スーパーで販売されている冷凍ブロッコリーの産地は、エクアドルなどの高地が多いのですが、とにかく虫が少ないそうなんです。
なので農薬がかなり少なく、年中収穫もできるので、国産の生ブロッコリーよりも安価なのだと、冷凍ブロッコリーの輸入をしている知人から聞いています。
キン:そうなんですか!! 値段が安すぎるので勝手に疑っていました……。
樋口:ちなみに、冷凍食材の多くはブランチングという加工がされています。
キン:ブランチング? なんですかそれは。
樋口:ものすごく分かりやすく言うと、ちょい加熱してから冷凍する手法です。少しだけ茹でたり蒸してから冷凍することで、格段に冷凍に強くなるんです。
キン:具体的にブランチングにはどんな効果があるんですか?
樋口:基本的に、そのまま冷凍しても長期間保存はできるのですが、ビタミンや色素を分解する酵素が濃縮されることで、酵素が活性化してしまうことがあります。
なので、あらかじめ加熱して酵素を失活させておけば、酵素の活性化を抑えることができて、品質低下を防げるんです。
キン:なるほど。
樋口:あとは殺菌効果もあります。食材を熱湯に通すと多くの菌を殺菌できますから。菌がついているのは野菜の表面なので、ブランチング処理をするとほとんどの菌や農薬を取り除けるわけです。
キン:冷凍食材には丁寧な加工がされていたんですね。例えば、冷凍の里芋は外側が加熱されていて中身は生になっていますが、あれはブランチングされているわけですか?
樋口:そういうことです。自宅でそれぞれの食材をブランチングするのは手間なので、冷凍食材をうまく活用していけると、日々の料理の手助けになってくれるかもしれませんね。
キン:全然知らなかったです……。ちなみに樋口さんはどんな冷凍食材をよく使うんですか?
樋口:そうですね。「ブロッコリー」「枝豆」「とうもろこし」「グリーンピース」「かぼちゃ」「シーフードミックス」なんかはプロでも冷凍品を使ったりします。鮮度が重視されるような食材は冷凍品がおすすめです。
冷凍を味方につけるには?
キン:ここまで樋口さんに冷凍に関するさまざまな教えをいただきましたが、冷凍をうまく活用していけそうな気がしてきました!
樋口:それは良かったです。恐らく食べきれない食材を冷凍庫に入れてしまう方が多いんじゃないかと思うんですが、先に目的を決めてから冷凍すると冷凍庫を味方につけられると思いますよ。
キン:まさに、物置のように冷凍庫を使ってました……。
樋口:冷凍を上手に活用するためには、先に献立や調理方法を頭に描いてから、適切な方法で冷凍してあげると良いと思います。
例えば、鶏むね肉を唐揚げにしようと思ったら、下味と保水をした状態で冷凍する。そうすれば長く保存できることに加えて、肉質も柔らかくなって味も入りやすくなる。
そして、半解凍の状態で衣をつけて低温からじっくり揚げれば、表面もこんがりジューシーな唐揚げに仕上がるわけです。
キン:確かに冷凍解凍のメカニズムを理解すると、冷凍庫との向き合い方が変わってきそうです。
樋口:加えて、「冷凍することは加熱と同じ調理である」と意識すると良いかもしれません。
冷凍も加熱も食材にダメージを与える面では全く同じで調理と言っても過言ではありません。それが100℃なのかマイナス18℃かの違いでしかないんですよ。
キン:「冷凍することは調理である」。これは名言ですね。いやぁ……とても勉強になりました!
樋口:それは良かったです。冷凍に関する技術や知識は、まだまだ家庭に知られていないことも多い印象があるので、より効果的に冷凍を使いこなしてほしいですね。
冷凍を生かした料理を作ってみた
さてここからは、樋口さんに教わった冷凍に関する知識や技術を駆使しながら、お手軽冷凍レシピを紹介していきます。
まずは、鶏むね肉の唐揚げから。
樋口さんの教えに従って、酒や醤油等で下味と保水をしてから密封して冷凍します。
調理するときには袋ごと流水で解凍して、半解凍状態の鶏むね肉に衣をつけて揚げていきます。
できたてを食べてみると、鶏むね肉なのにとてもジューシーに感じられて、味もよくしみています! これを冷凍庫に保存しておけば何かあった時に食卓を助けてくれそうです。
冷凍豆腐で作る肉そぼろ風
次にご紹介するのは、豆腐を冷凍して肉そぼろに見立てたメニューです。
取材中に樋口さんに教えていただいたレシピなのですが、豆腐を凍らせて水分を抜くことで、お肉のような食感になるとのことで実践してみました。
まずは豆腐の水気を取ってから、アルミトレーにのせて冷凍していきます。
解凍した豆腐はこんな感じになりました。
解凍した豆腐を手で絞って水分を抜くと、このような状態のお豆腐に。
今回はスパイスで炒めてみます。
食べてみるとびっくり。たしかに肉っぽい食感になりました!
醤油・酒・みりん・砂糖・生姜で炒めて鶏そぼろ風にしてストックしておけば、ダイエットにも使えそうでした!
余ったミニトマトを冷凍して作るフレッシュトマトパスタ
さてさて、調子に乗ってもう一品作ります。
これも取材時に教えていただいたのですが、樋口さんいわく、ちょっとだけ余りがちなミニトマトも冷凍できるとのことでした。
ただ、解凍時に水分が漏れ出してしまうので、凍ったミニトマトをすりおろしてパスタソースにすると良いですよとのこと。とても気になったので、実際にやってみます。
正直、ミニトマトを冷凍する発想すらありませんでしたが、実際やってみるとこんな感じなりました。
そして、凍ったミニトマトをそのまますりおろしてパスタソースにしてみます。
フライパンにオリーブオイルをひいて、唐辛子(1本)とにんにく(みじん切り1片分)、一口サイズにカットしたナスをいためたら、そこに冷凍したミニトマト(5~6個程度)をすりおろして、しばらく煮込みます。最後に塩で味を調えたら完成です。
完成したパスタがこちら。
缶詰のトマトを使用した場合は、しばらく煮込まないと味に深みが出ないのですが、こちらは簡単に火を通しただけで、グッとトマトのうま味が出ていました。めっちゃうまかったです。
まとめ
今回は、料理研究家の樋口直哉さんに冷凍に関するアレコレを教えていただきました。
取材を通じて感じたのは、冷凍についての知識が圧倒的に不足していたということでした。これからは、食べきれない食材を延命するために冷凍庫を使うのではなく、より調理や生活を快適にしていくために、攻めの姿勢で冷凍を使っていきたいと思います。
編集後記Q&A
編集後記では、記事内に収まりきらなかった冷凍に関する豆知識や取材のこぼれ話をお届けします。
キン:樋口さんのようなプロの方や、レストランでよく冷凍している食材ってあるんですか?
樋口:トマトソースやバジルソース、あとはブイヨンなんかは大量に作って冷凍にして使うことが多いです。
キン:冷凍するデメリットって何があるんでしょうか?
樋口:冷凍のデメリットは香りが失われることですかね。和風の出汁などは香りが失われるので冷凍に向きません。基本的な食材の場合は、保水や密閉をしっかり行い、乾燥しづらい状況を作ってあげれば、ある程度のデメリットは防ぐことができます。
キン:果物って冷凍に向いていますか?
樋口:食材によりますが、「りんご」や「梨」といった食感を楽しむ果物は冷凍には向かないですね。冷凍は食感を犠牲にすると考えるとわかりやすいです。ただ、スムージーにしてしまうとかであれば問題なく冷凍できますよ。
キン:冷凍解凍した食材を食べるときに意識すべきことはありますか?
樋口:生の食材に比べて、冷凍解凍した食材は味が抜ける傾向があるので、うま味を足すと良いです。
例えば、生のほうれん草でお浸しを食べるなら醤油が良いですが、冷凍したほうれん草をお浸しで食べるならめんつゆの方が美味しく食べられます。
他にも、冷凍した安価な赤身肉等を食べるときは、解凍するときにうま味調味料を一振りしてあげると、抜け出たうま味が補充されるので、美味しく食べられると思いますよ。
キン:スーパーで食材を買う時に注意することはありますか?
樋口:お肉は解凍品なのかチルドなのかはチェックするといいですね。解凍品を再度冷凍すると劣化が激しくなるので、本日ご紹介した保水や下味などで工夫されることをおすすめします。
キン:絶対に冷凍しちゃいけないものってありますか?
樋口:基本的に冷凍してはいけない食材はないんですが、豆腐やこんにゃくなんかは冷凍すると全く別の食感になってしまいます。高野豆腐や凍みこんにゃくと呼ばれる食材に変化しますので、元の食感と程遠くなるという意味では注意が必要です。
キン:冷凍すると賞味期限ってどうなるんですか?
樋口:これは食材によってバラバラですし、冷凍庫の性能や開け閉めの頻度や保存状態によっても変わるのでなんとも言えません。
あくまで目安ですが、豚ロース肉なんかは味噌漬けにしたり、タレに付けて冷凍すれ2~3ヶ月は余裕で持ちますよ。
キン:冷凍庫に食材を入れる際のポイントはありますか?
樋口:冷凍庫の冷気は下に向かっていくので、できるだけ下の方から詰めると良いですね。あとは隙間を空けずにみっちり詰めると良いですね。
以上、取材のこぼれ話でした。樋口さんの知識を参考に冷凍庫を味方につけてみて下さい。他にも冷凍に関する豆知識をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひコメント等で教えて下さい。
書いた人:キンマサタカ
編集者・ライター。パンダ舎という会社で本を作っています。 『週刊実話』で「売れっ子芸人の下積みメシ」という連載もやっています。好きな女性のタイプは人見知り。好きな酒はレモンサワー。パンダとカレーが大好き。近刊『だってぼくには嵐がいるから』(カンゼン)