筆者の郷里は東北の田舎なのです。そこでは正月だの新年会だの、飲み食いが激しいシーズンの終わりに「とろろご飯」で胃を休めるという習慣がありました。みなさんの田舎ではどうでしたか。
いろんな作り方がある「とろろご飯」ですが、私の郷里の場合はすりおろした山芋を味噌汁で割るのです。びっくりするくらい食べられます。びっくりしましょう。
材料
- だし:こんぶ、ごぼう、魚介系の粉末だし
- みそ:だし汁100ccに対して10グラムの割合
- とろろ芋:(長芋、山芋、大和芋、自然薯etc.)なんでもいいです
- ネギ:小口切りにして薬味にします
こんぶ、ごぼうを煮てだしをとっています。沸騰させないのが重要だといいますね。魚介系粉末だしはあとで入れます。
こんぶとごぼうを引き上げて、粉末だしを投入。本来はにぼしを使うのですが、手持ちのにぼしが無かったのです。とろろに混ぜるのでうま味成分は強めにとっておきたいです。
みそをこします。だし汁100ccに対してみそ10グラムが目安。とろろと混ぜるので味噌汁的には「ちょいしょぱ」な配分になります。なめて思わず「うー、しょっぺ」と言ったらオッケーです。
熱くて濃い味噌汁ができあがったわけですが、これを熱いままとろろに混ぜると芋が煮えてしまいますので人肌程度に冷まします。
冷ましている間にとろろをすりおろすのだ。
いわゆるとろろ芋、山芋の種類はお好みで選んでください。写真は上が長芋、下が大和芋です。長芋は手に入りやすく安価です。大和芋は粘りがすごい。最高級の山芋「自然薯」は入手を諦めました。食べてみたいものです。
長芋のひげ根はガスコンロで炙って焼き切ってしまいましょう。
とろろ芋をおろし金でどんどんすりおろします。よく洗って皮付きでいきましょう。
驚くべき粘り。
スプーンで引っ張り上げると、全部つながって上がってくる勢いです。
これを味噌汁で割ります。
すりおろしたとろろ芋と冷ました味噌汁を少しずつ合わせてすり鉢で当たります。なぜすり鉢なのかというと……。
ご覧のようにとろろ芋の粘りがぷりっぷり。
こりゃボウルと菜箸で簡単にちゃちゃっと混ぜられるような代物ではないのです。
味噌汁を少しずつ加えては混ぜます。すり鉢で当たると、思ったより簡単に混ざってくれます。
ウチの場合はすり鉢が小さかったもので、とろろ芋全量を一気に作ることもできず、とろろ芋を3~4回に分けてスリコギでギコギコやるはめになりました。
ちなみに配分は味見して決めます。
とろろ汁の調理といっても混ぜるだけなんですが、混ぜる場合に重要なのは比率。ウチの田舎のとろろ汁は、その肝心の比率があいまいなのです。
だし汁、味噌、とろろ芋の配合比は、味見をしながらフィーリングで調整するというレシピ再現性の低さ。
しかし、これには理由があるのです。
味噌は種類によって塩分濃度が違い、とろろ芋も種類によって粘度や水分が違うのです。定量的に「これだ」という比率を割り出せないのですね。
とろろ芋と味噌汁をすり鉢で当たっていい感じに空気を含んで膨らんだので、結構な量のとろろ汁ができあがります。
ちょっとだけでいい場合は、すりおろす芋の量をセーブしましょう。これまた目分量でやってほしいとしか言いようがないので申し訳ないス。
あったかいご飯に冷たいとろろ汁をかけまして、小口切りにしたネギを薬味にいただきます。
ご飯がドリンクになります。
喉ごし最高、滋味あふれ、味噌と出汁のテイストは優しくて素朴。
腹いっぱいだと気づく前に茶碗3杯くらいご飯を飲んでしまっています。
なにやっとんじゃ。
そして「とろろご飯」の真骨頂は「もう食べらんないよう」というところから3時間くらいでまた腹が減ってくるという恐ろしさ。健康食なのに不健康、イエー!
筆者の故郷のとろろ汁は「こんぶ・ごぼう・にぼし出汁の味噌味」ですが、いろんなところにいろんなレシピがあるはずです。
自分のとこのレシピこそベストだと思いたいのが人情ですが、日本にはもっとおいしいとろろ汁や、違う食文化圏で食べられている異質なアーキテクチャーのとろろ汁があるはずなので、いろいろ食べてみたいなと思っております。
※この記事は2017年1月の情報です。