自分専用のソースを独り占めできる串カツ店が本場大阪にある

自分専用のソースで串カツの二度漬けができちゃうお店が、本場大阪にあるんです。それがこちらの「ヤナギストア」です。

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※この記事は2020年の緊急事態宣言前に取材しました

 

まいど憶良(おくら)です。

大阪で食べたいものといえば、たこ焼きやお好み焼きなどいろいろありますが、忘れちゃいけないものが串カツ。

気軽に食べられて美味しいんですよね。

そして大阪の串カツと言えば、「ソースの二度漬けお断り」がルール、これ常識です。特にコロナ禍の現在、二度漬けなんかしようものなら店員さん、お客さんから白い目で見られるでは済みません。

またネット上では、どうすれば二度漬けができるか論争が繰り広げられたり、お店が販売しているソースを器に入れてもらって二度漬けをする人まで出てくるほど、ソースの二度漬けに対して、一種「あこがれ」ともいえる感情があるのかもしれません。

 

なんとソースの二度漬けOKのお店が本場大阪にあった!

そうなんです。

やっちゃいけないと言われるとやりたくなるのが人情とはいいますが、ソースの二度漬け、三度漬けを心ゆくまで楽しめるお店がここ、ヤナギストアなんです。

 

と、いうことで大阪市西区は北堀江にやって来ました。

 

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※取材時と営業時間が変更になっています

 

ヤナギストアってちょっと変わった名前ですが、店長の柳さんによりますと、コンビニエンスストアのような気軽さで立ち寄って欲しいという思いが込められているそうです。

朝4時までやっているというところもコンビニ感覚ですよね。

 

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面白いのは各席に湯のみがセットされていること。

この湯のみがポイントとなりますので後で改めてご紹介しますね。

 

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看板メニューの「おまかせ5串」

メニュー表のトップで、しかも味自慢と書いてあるからには食べないわけにはいきません。

まずはこの「おまかせ5串」(この日は、赤ナス、しいたけ、ハムエッグ、海老、手羽素揚げ)を頼みましょう。

 

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それだけではちょっと寂しいので他にも単品でいくつか注文しました。

 

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まずはネタをバッター液につけます。

バッター液とは、魚や肉、野菜を揚げる前に素材の表面を覆うために使う液のことです。

以前なぜバッター液というかを調べたときに、「フライをあげるのがバッターだから」という解説があり、「バッターはゴロだって打つやんっ!」と思ったことがありましたが、“野球のバッター”とは関係ないんですね。

ちなみにここのバッター液には山芋が入っていて、口当たりがとてもよい状態に揚がるんです。

 

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続いて細かい目のパン粉を付けます。

 

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ナスは皮面のパン粉を落として

 

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美しく揚げます。

 

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使う油は植物性のもの。

 

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とにかく軽く、いくらでも食べられるように考えられているんですって。

 

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串カツのあがり具合は音と、箸でつまんでみたときの振動で判断するそうです。

さあ、どんどん揚がってきました。

 

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おまかせ5串(880円) ※税込み。以下全て税込み価格

「おまかせ5串」のネタはお任せなので日によって違います。

 

温かいソースが旨い! そしてこれが二度漬けOKの秘密

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初めの方で少し触れた湯のみ。

一人一つ用意されたこの湯のみに入れられるのはなんと熱々のソース。

 

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ソースは自分専用なので、当然何度漬けてもいいんです。

一口食べたら、

 

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もう一度漬けて食べる。

う~ん、夢の二度漬け初体験です。

 

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このソースは大阪は羽曳野(はびきの)の鼓ソース(つづみソース)と、3種類の魚節で取った出汁を合わせたヤナギストアオリジナルソース。

鼓ソースは関西では有名なソースで、ここで使われているのは南河内産のいちじくと河内産赤ワインを使った串カツ辛ソース。

 

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これです。

 

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このソースだけでももちろん美味しいんですが、そこに魚介出汁が入ることでより旨味を引き出してくれます。

さらに温かいソースは、せっかくの熱々串カツから熱を奪わないという工夫もされているんです。

 

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こりゃもうビール(638円)に合わないわけありません。

 

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くっとビールで口の中をリセットし、また串カツを食べる。

うん、こりゃ天国です。

 

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串カツ自体も様々な味と食感でいくら食べても飽きがきません。

というか、本当に軽く食べられます。

油がさらっとしていて、しつこくないんです。

 

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漬けては食べ、

 

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食べては浸ける。

 

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ソースを使い切ったらポットから追加で熱々ソースを注ぐことができます。

 

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なんと追加料金なし。

それにしても、食べても食べても油を重く感じないのはどうしてなんでしょう。

 

油が新しいだけでない。50%油をカットするフライヤーとは

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ヤナギストアでは油の状況にもよりますが、大体2日に一度は油を新しいものに変えて使っているそうです。

そして、このフライヤーもなかなかの優れモノなんです。

正確にはフライヤーに仕込んだ「ドクターフライ」という電極パネル。

 

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このパネルから1秒に5万回電波振動を発することで食材の中の水分子を安定させるというものだそうです。

理屈はよくわかりませんが、水分が油中に出てこないので、食材の水分を保ちながら表面はからりと揚がり、揚げ時間も短くなり、なによりも油を食材が吸わなくなるので油が50%もカットされるんです。

そういえば手羽は素揚げしてたけれど水はねもしなかったし、煙もあがってなかったような。

理屈はともかく、油っこくないのでいくらでも食べられるのは嬉しいものです。

 

名物「土手カツ」は癖になりそうな旨さ

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「土手カツ」って、聞いたことがありそうで無い、なんだか不思議な言葉です。

 

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平たく言うと土手味噌煮に串カツをくぐらせた料理なんですが、これがまた美味しい。

 

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しかもこれで220円って! コスパはんぱない感じです。

 

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ちょんとカラシを付けて食べますと、

うんまっ! 

 

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すじ肉も美味しい。

これ、本当に220円でいいの? 

 

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途中でクロガラミを振りかけて食べます。

クロガラミとは、唐辛子や山椒、ゴマなど10種の香辛料が入った薬味唐辛子のこと。

 

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これがまた薬味だけを手のひらに出してペロっと舐めても美味しい。

薬味のチョイス一つをとっても食に対する貪欲さやセンスを感じます。

 

実はソースを付けない串カツも旨い

単品で頼んだエビパンです。

 

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パン粉の代わりに使うのはパン。

 

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バッター液をパンに塗って、バッター液にくぐらせたエビを

 

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パンにはさみます。

 

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それを揚げたのが

 

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こちら、海老パン(330円)。

上に乗ってるのはタルタルソース。

あれだけしっかりと油の中にいたパンが、ウソのように軽くてこれもまた旨い。

海老の尻尾まで食べられるのも嬉しいです。

 

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アスパラガス(275円)もいい。

 

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上にかかっているのはアンチョビマヨ。

 

切らずにまるまる一本ってのがテンション上がります。

 

カツだけに。

 

……。

 

あ、いや、何でもないです。

 

それはさておき。

 

なんだか延々食べられそうですが、最後におすすめの〆方を教えてもらいました。

 

〆は「my麺」で決まり

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ソースがもったいないということで開発された〆です。

茹でられているのはオリジナルの豆腐麺。

豆腐を練りこんだヘルシーな麺です。

 

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茹で上がったらこれに出汁を入れます。

 

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薬味を添えて堂々完成、「my麺」(528円)。

 

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まずはうどんの出汁をレンゲですくってソースの中に入れます。

 

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薬味のアオサと生姜とネギを入れて、豆腐麺を……

 

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つゆというか、出汁ソースに漬けて食べると、最初の一口は若干の違和感があったものの、二口三口と食べるうちに加速がつきます。

ソース特有のカドがある味が、その風味を残しつつ出汁によって丸くなるんです。

 

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残った出汁だけ飲んでも美味しい。

黒石のつゆ焼きそばや船橋のソースラーメンなどと似て非なる感じですが、これも一種独特の美味しさ。

うどん出汁、出汁ソースを交互に味わってフィニッシュ。

 

ごちそうさまでした! いやぁ、美味しかったぁ。

今まで食べてきた大阪の串カツは、それはそれで当然美味しいんですが、ヤナギストアの串カツはそれをベースにどれだけナチュラルに遊び心を加えて食べさせるかというテーマを持って、それにチャレンジしているという印象を持ちました。

そして、あれだけ何度も串カツを漬けたにも関わらず、びっくりするほどソースに油が浮いてない! これはびっくりです。

 

二度漬けOKだけでない、新たな串カツ誕生

〆のmy麺までお腹いっぱいいただいたところで、ヤナギストアの店長さんにお話をうかがうことにしました。

 

──お店を始めるにあたってはどこかで修業されたんですか。

 

店長さん:実は元々は美容師をやっていたんですが飲食業に転職して2年ほど働き、新しいお店を作らせてもらうことになりました。

どんなお店をやろうかと考えるうち、しゃちほこばったものより、気軽に食べられるものがいいと串カツ屋さんをしようと思いました。

それからは串カツを食べまくって研究したり、仲良くしていただいた串カツ屋さんにいろいろ教えていただいて覚えました。

ですのでほぼ独学です。

 

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──串カツを二度漬けOKにしたきっかけは? 

 

店長さん:串カツを食べまくっていた時にもったいないなぁと思ったことがあったんです。

それはせっかく熱々で出てきた串カツを冷たいソースに漬けて冷ましてしまうこと。

そこであったかいソースを湯のみに入れて提供することを考えました。

するとお客さん一人一人にソースを出すことになるので、結果二度漬けもOKになったわけです。

何度も漬けて楽しむソースはどんなものかと試行錯誤を繰り返して、今の魚介出汁と合わせたソースにたどり着きました。

 

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──串カツに対するこだわりはどういう部分ですか。

 

店長さん:とにかく軽く食べられることが一番です。

パン粉、衣、油、ソース、そしてドクターフライの導入。このドクターフライで魚をそのまま揚げると、油でベチャっとしないで焼き魚みたいな仕上がりになるんですよ。

どれだけ油が回らないんだというくらい素材が油っぽくならないんでびっくりです。

ウチは営業時間が11時半から翌朝4時ということもあって、とにかく軽く食べられる串カツをコンセプトとしています。

そうでないと、この時間に油物を食べようとは思ってもらえないですから。

後は仕込みを丁寧にするとか、まぁ当たり前のことをしっかり当たり前にするというところですね。

 

──最後にここまで読んでくださった読者さんへのメッセージをいただけますか。

 

店長さん:最初はソース二度漬けOKを体験しに来ていただければと。

一度食べて納得いただいて、また来ようと思えるような料理をお出ししますので是非コンビニ感覚で寄ってみてください。

串かつ定食なら串カツ3本、キムチ、アサリの味噌汁、ポテサラとご飯で980円とお手軽価格になってます。

お酒を飲む人も飲まない人も楽しんでいただけると思いますので、本当にお気軽にお越しください。

 

ヤナギストアでは新型コロナウイルス対策として、これまでより席数を減らし、テラス席も活用してソーシャルディスタンスを確保。また各席にはアルコール除菌スプレーを置いたり、窓や扉は開けて十分な換気を行ってお客さんをお迎えしています。

 

※この記事は2020年の緊急事態宣言前に取材しました

 

お店情報

ヤナギストア

住所:大阪大阪市西区北堀江1-22-23 北堀江ビル1F
電話番号:06-6536-3382
営業時間:11:30~翌4:00(Food LO 3:00 / Drink LO 3:30)
定休日:無休
※営業時間は変更される場合がございます

 

書いた人:憶良(おくら)

憶良(おくら)

ゲームプランナー、プロデューサー、CMディレクター、ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。日本で一番古いハンドルネーム、OKURAです。休日はよく温泉に行き、その道中では積極的に食べ歩いたり、行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込んで料理したりと、食に対してはかなり貪欲。「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に、悪いことを考える人はいない」という持論を持つ。

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