ディスク百合おんって何者?
こんにちは、パリッコです。今回も調査という名の飲み歩き活動にいそしんでいきたいと思います。
先日、僕の友人「ディスク百合おん」さんのなにげないツイートが、爆発的にRTされ、インターネット上で大きな話題となりました。
ちなみにディスク百合おんさんとは、一部で熱狂的な支持を集める、一風変わったテクノミュージックを作るミュージシャン/DJ。
最近では、山本さほ先生の漫画『岡崎に捧ぐ』に登場する「杉ちゃん」のモデル(というか本人)としても有名で、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
で、話題となったツイートというのが、某コンビニエンスストアの「冷凍担々麺とごまだれ付き棒棒鶏を合成するとボリューミーで濃厚な担々麺が完成します」というもの。
絵:パリッコ
コンビニですぐに手に入る食品2つを組み合わせたら驚くほど美味しい新メニューが完成した、という、簡単にまねができて、すぐにでも食べてみたくなるキャッチーさが受けたのでしょう。
なんとこの原稿を書いている時点で、13,000RT、14,000いいねを突破中です!
以来、百合おんさんには、本業であるミュージシャンとしてではなく、このグルメネタに関する新聞取材やラジオへのゲスト出演オファーがあとをたたず、もう肩書きを「コンビニかけ合わせグルメ研究家」、芸名を「おまぜ」に変更したほうがいいのでは? と提案しているのですが、まだ首を縦には振ってくれません。
とにかく、友人がそんなに話題になっているならば話を聞いてみないわけにはいかない!
これまでは主に良い居酒屋さんを中心にご紹介してきたこの連載ですが、今回は百合おんさんのお宅におじゃまし、日々どのようにかけ合わせグルメを楽しんでいるのかを潜入調査させてもらいたいと思います!
ひとり暮らしの百合おん邸へ
ディスク百合おんさん「ようこそ我が城へ!」
というわけで、やって来ました、都内某所にあるディスク百合おん邸。
コンパクトなキッチンとワンルームからなる、男のひとり暮らしには過不足ないサイズ感のマンションです。
小ざっぱりと整頓され、掃除も行き届いており、さぞ快適で楽しい暮らしなんだろうなぁと想像させられる部屋ですね。
▲一流メーカーのDJセット
クラブミュージシャンの面目躍如、部屋にはいつでもDJプレイができる環境が完備されていました。
コストパフォーマンスの高いスピーカーを知っているのもミュージシャンならでは。
ブース横には、プレイで使用するアナログ(感あふれる8cmシングルCD)が積み上げられていました。
ひとり暮らしのいやしの定番、ペットのハムスター! と思ったら、なぁんだ、シュレッダーか。
さらに、本棚には往年の子供向けグルメ漫画の名作『Oh! my コンブ』の『リトルグルメ大百科』が! 何を隠そう、百合おんさんは『Oh! my コンブ』の大ファンで、以前は漫画に出てくるリトルグルメを実際に作ってみるイベントなども開催されていたそう。
つまり、先のツイートが話題になったのも、ポッと思いついたことをつぶやいたら偶然広まったわけではなく、昔から好きでコツコツと積み上げてきた経験があってのものだったんですね。
いや~頼もしい!
「かけ合わせグルメ」を試作
さて、それではこのへんで本日の趣旨を説明したいと思います。
百合おんさんはこれまで、すでにたくさんのかけ合せグルメレシピを開発してきているのですが、今日は「思いついてはいたけどまだ試していないメニュー」を何品か作ってもらおうと思います。
つまり「試作会」!
まさに日々、家で楽しまれている様子そのままの再現というわけですね。
そして、せっかくなので僕も自分なりのかけ合せグルメに挑戦しようと、コンビニで食材を何品か買ってきました。
さらに、僕と百合おんさん共通の友人であり、メシ通のライターでもあり、そして一部では「コンビニ飲みの達人」としても有名な、スズキナオさんにも参加してもらいましょう。
以上3名のメンバーで、思い思いのかけ合せグルメを作りつつ、あーだこーだ言いながら、楽しく飲み会をしてしまおうというわけです。
それではスタート!
ディスク百合おんさんの1品目
「今日の主役は、コンビニやスーパーでよく目にする『豆腐そうめん』なんですよ。しかもこれで、2品のかけ合せグルメを作ってやろうと思ってます!」と語る百合おんさん。
え、そんなシンプルそうな食材で2品?
本当に可能なんでしょうか!?
「ハハハ、バカだなぁ。できるに決まってるじゃないですか!」
と、慣れた手つきでそうめんをお椀に移し、何やらちょいちょいっと乗せたら……。
「ほ~うら、一丁あがりでいっ!!」
【ぶっかけツナキムチ豆腐そうめん】
作り方:市販の豆腐そうめんに、缶詰のツナ、キムチを乗せ、そうめん付属のタレとノリをかける。全て目分量。
「これまでの経験上、間違いないと思います」と語る百合おんさんから器を受け取り、まずは僕が試食させてもらうことにします。
(見た目がちょっと貧相なのが気になるけど……)「いただきます!」
ズルッ、ズルッ……。
「…………」
「うっま!」
いや~、こいつはうまい。
海苔やツナの風味、キムチや麺の食感など、それぞれが良いアクセントになって見事に引き立てあっています。一見あっさりしすぎていそうだけど、食材それぞれにパンチがあるのでちゃんと満足感もあり。
百合おんさんいわく「コクを出すためにも、ツナの油は切らずに投入した方が良いでしょう」とのこと。
さすが達人、1品目からオーマイコンブ状態です!
スズキナオさんも試食。思わず切ない顔になってしまうほどの美味しさ。
顔がブレてしまうほどの美味しさ。
パリッコの1品目
百合おんさんの鮮やかな技を目の当たりにしたところで、いよいよ初心者である僕の挑戦です。
コンビニの棚を何往復もウロウロしながら、店員さんから不審者と怪しまれつつ思いついたメニューなんですが、まずはどこにでも売っている大定番の「ツナ&タマゴサンド」を用意し、
このように、片方のパンをはがしてお皿に並べます。
そんでもって、
スライスチーズを1枚。
そう、これをトースターでこんがり焼いてしまおうというわけ。
僕、日頃からもっと気軽に、焼きたての「ピザ」が食べられたらな~と思うことがあり、これがちょっとした「ツナと玉子のピザ」風に仕上がれば、コンビニ食材で気軽にその欲を満たせるんじゃないかと。
ちなみに、懸案事項だった「はがした方のパンをどうするか?」問題ですが、ひとまずサンドイッチの形に戻し、達人に味見してもらうことに。
これが絶品だったら新発見。
パクッ!
「……うん、なんとなくツナと玉子の風味を感じる気がする食パンですね」
そりゃそうか。
なんてことをしていると、肝心の本体が焼きあがりました!
【コンビニサンドのピザ風】
作り方:市販のサンドイッチを開いてスライスチーズを乗せ、こんがりするまでオーブントースターで焼く。仕上げにコショウをひとふり。
おぉ! 焼きあがりはめちゃうまそう!
「達人、どうですか!?」
「普通に美味しいけど、予想は超えてこないっすね……」
う~ん、無念。
かけ合せグルメの醍醐味は、2つ以上の食材が出会った時に、足し算ではなく掛け算になること。
その相乗効果がない以上、この組み合わせは成功とはいえないでしょう。
実際僕も食べてみましたが、まずピザっぽさが全然なく、ふわっサクッとして美味しいパンに具が乗ったチーズトーストという感じ。
これなら家でピザトーストを作ればいいことですね。
ただ、この軽〜い食感に加えて、熱々なのも素晴らしいので、買ってきたサンドイッチをそのまま、家のオーブンで少し焼いて食べるのはおすすめかもしれません!
パリッコの2品目
続けても僕のチャレンジ。
次の食材は「ハンバーガー」です。
ハンバーガー、たいがいのコンビニには売っていると思うんですが、パン売り場とか惣菜売り場の片隅に追いやられていて、専門店での扱いから比べると、なんだかちょっと日陰者のイメージですよね。
専門店に比べて食材の組み合わせがシンプルすぎるせいか、実際に食べてもちょっと物足りないような気がすることも少なくありません。
それならばと、
ぱかっと、またしても一度パンをはがしてしまいます。
あらためて見ると、やっぱりちょっと具がストイックすぎる。
そこで、別に買った「野菜サラダ」をドサドサと乗せていき、
さらに、フレンチドレッシングもかけてしまいましょう。
この酸味も味を引き締めるポイントになるのではと予想。
【ヤサイマシマシチーズバーガー】
作り方:市販のハンバーガーを開いて野菜サラダをたっぷりと挟む。ドレッシングも忘れずに。
どうでしょう?
ちょっと見た目の美しさに欠けますが、一品としての存在感は高まったように思えます。
ではでは、
「いっただきま~す!」
「ウメ~!!!」
これはきた!
ハンバーガーとサラダの組み合わせが、1+1=2ではなく、5にも10にもなっています!
単体だと少しそっけなく感じるバーガーに、野菜のフレッシュさとシャキシャキ食感が加わることでこんなにも充実した一品になるとは。
狙い通りドレッシングの酸味も良いアクセントになっていて、物足りなさ皆無!
「どれどれ」
「アラいいじゃない」
「これ、もうハンバーガー屋のハンバーガーですよ!」
というわけで、僕の2品目は大成功。
ついにコンビニかけ合せグルメの醍醐味を味わうことができました。
た、楽しいな~!
ディスク百合おんさんの2品目
ドン!
見ての通りなんですが、4当分に切った食パンの上にスライスチーズ、おつまみコーナーなどで売っている、からしマヨ味のカニカマが乗り、仕上げにマヨネーズがかけてありますね。
これを数分オーブントースターで焼けば、チーン! と完成。
【カニカマからしマヨチーズトースト】
作り方:食パンの上にスライスチーズ、からしマヨ味のカニカマ、マヨネーズを乗せ、オーブントースターで焼く。
熱々をガブッ!
これはもう、見るからに間違いのない組み合わせですが、やっぱり間違いありませんでした。
特に驚いたのはカニカマで、温めて風味を増したことと、チーズやパンと渾然一体となることで、本物のカニっぽさがグッと上がっています!
「間違えてカニ買ってきちゃったんじゃないの?」とみんなでパッケージを確認したほど。
これ本当なんで、ぜひご自宅でも試してみてください!
百合おんさんいわく「マヨネーズはもっとたっぷりの方が良かったかも」だそうです。
スズキナオさんの1品目
はい、ここでお待ちかね、ナオさんの登場。
コンビニでお酒やおつまみを調達して飲むことに関しては日本屈指の実力者ですから、いやが上にも期待が高まります。
一体どんなかけ合わせグルメを披露してくれるのか!?
???
な……何これ!?
って感じですが、まだ途中経過。
下は普通のミートソーススパゲティで、上はカップタイプの野菜トマトスープの中身だそう。
ここに、
熱湯を注いで、
よ~く混ぜちゃう。
【スープあんかけミートソーススパゲティ】
作り方:市販のミートソーススパゲティに、カップの野菜トマトスープの中身をあけ、熱湯を注いでよく混ぜる。
これはちょっと想像がつかないですが、一体どんな味になっているのでしょうか?
「うまいことは間違いないと思うんですけどね……」
「ほぉ~!」
どちらもトマトベースなので、お互いの味が邪魔することなく高め合い、さらに食感が全く新しいものに生まれ変わっています。
ていうかこれ、名古屋のご当地グルメ「あんかけスパ」そのものじゃないっすか!(食べたことないけど)
「クセになるうまさ〜」
「ご馳走ご馳走!」
思わず素に戻り、ボソッと吐き捨てるように絶賛する百合おんさん。
三十路男のひとり暮らしのリアルを垣間見たような気がしました。
スズキナオさんの2品目
続けてもスズキナオさん。
登場したのは、
餃子!
しかもすでに焼かれて惣菜コーナーに並んでるやつ。
たまに無性~に、このタイプのやつをレンジで温めなおした、ヘニャヘニャした餃子で白いご飯が食べたくなる時ってありません?
僕はあります。
そこに、
これまた出来合いの麻婆豆腐をダーッとかけて、
【麻婆かけ餃子 ~四川風~】
作り方:市販の焼き餃子に市販の麻婆豆腐をかける。
豪快な一品ですね。
「~四川風~」の大げささにもひっかからないではないですが、これはきっと、買った麻婆豆腐が四川風だったということでしょう。
なんでもナオさん、以前ちょっと良いビュッフェスタイルのレストランに行き、シェフにおすすめの食べ方を聞いてみたところ「けっきょく混ぜちゃうのが一番うまいんすよ!」と言われたとのこと。
それをヒントに生まれたメニューというわけでした。
試食してみましたが、これに関しては全員「餃子に麻婆豆腐をかけた味ですね……」という結果に。
「ビールには合いますけどね!」
ディスク百合おんさんの3品目
冒頭で「今日は豆腐そうめんで2品作る!」と豪語していた百合おんさん。
「ぶっかけツナキムチ豆腐そうめん」を作った時に少し残しておいた分を小さなお椀によそって持ってきました。
そこに、
フリーズドライのかきたまスープを乗せ、
お湯を注げば、
あっという間に上品なお椀が完成!
【かきたま豆腐そうめん】
作り方:豆腐そうめんにフリーズドライかきたまスープのもとを乗せ、熱湯を注いでさっと混ぜる。
これはすごい!
まず調理時間が、ものの15秒です。
それでいてこの完成度の高い見た目。
お湯を注いだ瞬間に良い香りがふわ~んと漂い、がぜん食欲も湧いてきました!
「まずは僕が……」
「キターーー!!!!!!!!!」
大成功のようです。
「あ、これはうまい……」
「染みるわ~……」
というわけで、またしても大ヒットメニューが誕生。
あらためて味わってみると、フリーズドライのスープってこんなにも美味しいんですね。ちゃ~んとダシの味がするし、卵はまだ溶いたばっかりみたいだし、三つ葉の風味も鮮烈。
お酒を飲んだあとの締めや二日酔いの朝には特に最高だろうし、体調を崩して食欲のない時なんかでも食べやすいと思います。
それにしても、豆腐そうめん、めちゃくちゃ使えるな~!
ディスク百合おんさんの4品目【おまけ】
百合おんさんには「3品ほど作ってください」とお願いしていたので、ここで本編は終了。
……の、予定だったのですが、急遽「ひとりじゃない時にどうしても試してみたかったメニューがある」とのことなので、おまけでもう1品ご紹介。
そそくさとサバの水煮の缶詰をお椀にあけ、チューブのショウガを絞って醤油をかけ、我々の前に差し出す百合おんさん。
「どうぞお召し上がりください」
いやこれ、かけ合せグルメというか、もはやサバ缶に薬味乗っけて食べてるだけなのでは……。
そりゃあうまいでしょうよ! お酒によく合うことも知ってますよ!
なんてことを思いながらも美味しく頂くと、「食べたあとの汁は捨てないでくださいね!」との指示が。
「ここで割りスープですよ!」と百合おんさんがお椀に注ぎ込んだのは、なんとただのお湯!
【サバ缶しょうが醤油】
作り方:サバの水煮缶にショウガを乗せて醤油をかける。締めの割りスープがポイント。
なんでも「以前からサバ缶の余り汁にお湯を足すとおいしいおツユができるのでは? と想像していたけど、ひとりでは試す勇気がなかった」とのこと。
はは、確かにいい機会、我々も運命共同体となりましょう!
でも味見は百合おんさんからね。
ズズ……。
「…………」
「(笑)」
ズズ……。
「…………」
「(笑)」
ズズ……。
「…………」
「そういうことか~……」
結論ですが、特別美味しいということもないばかりか、特に面白くもない味でした。
まぁそりゃあそうでしょう。メーカーさんも、こういう食べ方を想定して作っているわけではないですし、これがうまいならもっと広まっているはずですもん。
つまり完全に我々(というか百合おんさん)が悪い!
とはいえ、「まずくて飲めない!」とか「生臭い!」ってことはなく、「進んでは飲まないが、飲めと言われたら全然大丈夫」という感じ。何かもう一手間かけたらもっと美味しく頂けるかもしれないので、そういった情報をお持ちの方はぜひ教えてください!
おっと、楽しい時間はあっという間にすぎ、僕とナオさんはそろそろ終電の時間です。
大急ぎでテーブルを片付けようとすると、心優しい百合おんさんが、「そのままでいいですよ」と言ってくれたのでお言葉に甘えたんですが、帰り支度をしながらチラッと居間に目を向けた時の、
「……これ、全部俺が食うのかな?」
という哀愁の表情がとても印象的でした。
「いつでもまた来てくださいね!」と笑顔で我々を送り出してくれた百合おんさん。
以上、コンビニかけ合せグルメの生みの親、ディスク百合おんさんとともに楽しむ、かけ合せ飲み会レポートでした。
最後に百合おんさんに、コンビニかけ合せグルメを楽しむ極意について聞いてみたところ、「手軽さこそが最大の魅力なので『ひらめき』と『勢い』を大切に!」とのこと。
美味しさ、楽しさ、驚き、発見、ちょっぴりの哀愁、たくさんの要素が味わえるかけ合せグルメの世界、僕もまだまだ新メニューの開発を続けていきたいと思いましたし、読者のみなさんもぜひ挑戦してみてくださいね~!
百合おんさんの名誉のため、本当の笑顔はこちらでした。