切れてますか? おたくの包丁
ちみをです。好きな包丁は牛刀です。
今日は包丁のお話。
▲我が家の包丁
料理には欠かすことの出来ない包丁。
なのに意外と手入れをないがしろにされがちな包丁。
買ったばかりの包丁は「きれる~さいこ~」ってトマトひとつ切るにもウキウキだったのですが、数回使えばあっという間に切れ味が落ちてきますよね。
安い包丁ほど切れ味のピークアウトは早い
いくら高い包丁でも、研がなければ結局は切れなくなります、
▲切れ味グラフ(あくまでも筆者の主観です)
包丁の高い安いは切れなくなるまでの期間の違い、いわゆる「刃持ちの良さ」の違い、こまめに研いでいれば、安い包丁でもさほど問題ありません。
お料理大好きクラスタならいざ知らず、とりわけ独身男の包丁というのはその後まともな手入れがされることなど皆無であり、まあ正直、多少切れ味落ちようがグリグリやりゃなんでも切れるっちゃ切れるので「くっそ~切れね~イライラする~!!!」って言いながらもそのまま使い続け、で、いよいよとなったら結局量販店でまた安い包丁に買い替える……そんなループに突入してしまうわけです。
包丁を研ぐ意味
別に「モノは長く大事に使いましょう」とか説教臭いことを言うつもりはないのですが、やはり研ぐことによるメリットは非常に大きなものがあります。
切れ味が「料理の仕上がり」へ影響するダイレクトな部分は言わずもがな、「切る」という動作のステージがアップすることによるプリミティブな快感、そして「研ぐ」行為自体がもたらすトランス感は特筆すべきものです。
研ぐ意味①コスト面
単純に、経済面で考えます。
仮に2年に1本、3,000円程度として、10年で15,000円、20年で30,000円、50年で75,000円。
しかし、ぼちぼちの包丁と砥石を買っても、15,000円とかで収まるのです。
そして、家庭で使っている限りは普通の刃渡りならば、研いでも研いでも全然減りません。たいていの人にとっては一生モノになるでしょう。
研ぐ意味②好きな切れ味に調整可能
砥石に対して包丁を寝かす角度を鋭角にすればするほどシャープな切れ味、逆に角度を立てれば立てるほど切れ味より耐久性が増します。
用途や頻度に合わせて好きにチューンアップすることができます。
▲角度が大事
研ぐ意味③超気持ちいい
いつでもスッパリ包丁が切れる、実はそれだけでめったくそ気持ちがいいし、意味が深い。買いたての包丁のあの切れ味を思い出してください。
▲うすーーく刃が入る快感
豆腐でも切るようにトマトに刃が入る、力も入れず食材にストンと刃が入ってスパっと切断されるさまは、それだけで精神衛生上、重要な意味があると考えますが、それがちょっとした手入れをするだけで何時でも味わうことができるとなると、これはある種の自己セラピーのようなものであるとも言えます。
研ぐ行為そのものにも、非常に強い精神作用があります。
繊細に刃の角度を固定し、一定のスピードとストローク幅で前後を繰り返しながら指先からのフィードバックを鋭敏に感じ取る一種の瞑想(めいそう)にも似た精神世界への没入感は、もはやマインドフルネスの一種でもあり、反復の魔力が作業者の意識レベルをネクストステージへと押し上げてくれるはずです。
「でも、包丁研ぎって、難しいんでしょ……?」
そうお思いの皆様、わかりますその気持ち、そう思いますよね、でもこれ一度やってみるとですね、意外や意外「思ったより2.000倍くらい簡単」にできる、素人が家庭で使うのに必要な程度の仕上がりであれば、正直なんにも難しくありません。
というわけで前置きが長くなってしまいましたが、今回はうちにあったいつ買ったかも忘れてしまったオンボロのナマクラ三徳包丁をバリっと研いで、みなさまに包丁研ぎがいかに有意義でやりがいに満ちた儀式であるか、提示してまいりたいと思います。
こんな手順で研ぎます
▲うちのナマクラ
▲よく見ると、刃こぼれがひどい
▲my砥石
まずは15分~20分ほど水に漬けて、水分を含ませます(時間は砥石により変わるようです) 。
これは水で滑りを良くするためなのですが、砥石は密度がスカスカでよく水を吸うので、あらかじめ水をパンパンに含ませておかないと研いでいる最中に何度も水をかけなければならなくなるからです。
ちなみに水に漬けるときは、百均に売っている「レンジでパスタをゆでる容器」がオススメ。すっかり水を吸い込んだら、ズレないように下に濡れ布巾などを敷いてセッティング。
そして包丁はこんな感じに利き手で柄を持ち、もう片方の手を研ぎたい場所に添えます。
一度に全体は研げないので、先端、真ん中、根本の方と概ね3箇所に分けて研ぎます。
包丁を当てる角度はだいたい45度。
だいたいでOKです。
また刃をどのくらい寝かせるかですが、だいたい15度くらい、十円玉が2,3枚入る程度が目安と言われています。
これもあくまで目安であって、寝かせれば寝かせるほど切れ味が良くなる反面、刃持ちが悪くなり、角度を起こせば起こす逆に刃持ちは良いが切れ味はイマイチとなります。
あとは好みだと思います。
研ぐ頻度や用途、またその包丁によっても適した角度はあると思いますので、各自工夫してみると良いでしょうし、研ぎ方により包丁のキャラクターが変化すること自体が包丁研ぎの魅力であると思いますので、まあいろいろやってみましょう。
それでは研ぎます
▲ひろーく
なるべく砥石の端から端まで存分に使います。
▲前後前後
角度は一定を保ちますが、まあだいたいでOK。
最初はけっこう難しいですが、そのうち慣れてきます。上手に前後反復できると研いでいるうちにどんどん陶酔状態に入っていきます。
非常に心地よい、包丁研ぎのハイライトです。
トランスしながら10回20回と前後していくと、研いでる面と逆の面の刃先に、触ると指に引っかかるような感じ、いわゆる「かえり」(バリとも言う)が出てきます。
▲こんな感じでかえりを確認
これが研げている証拠です。この「かえり」が全体に出たら作業完了という事なので今度は裏面に移ります。
裏面はこんな感じで持って、先ほどと同じ要領で研ぎます。
ただ「かえり」が取れれば良いので、表面よりも少ない回数で力加減も弱くてOKです。
※途中表面の水分が足りなくなってきたら水滴を掛けながら研ぐと良いですが、研いでると出てくる「とぎ汁」には砥石の粒子が良く出ているため、洗い流したりはしないほうが良いです。
全体の「かえり」が取れたら完成なのですが、目の細かい仕上げ砥石があればもう一度繰り返し研ぐとさらにいい感じに仕上がります。
▲目の細かい砥石で仕上げます
砥石は番手違いで2種類あったほうがベターですが、今回使ったような両面になっている砥石を買うと1枚で済むのでよいでしょう。
まあ、ぶっちゃけ別に仕上げをしなくてもよく切れるようになります。普通に野菜を切ったりする程度なら個人的にはやらなくて良いと思います。
砥石はAmazon等で山ほど売っているので評価が良さそうなやつを適当に買いましょう、多少番手が違っても初心者や素人には違いはわからんと思います、なので初めは適当でいいと思います。私はよくわかりません。
ちなみに、必要であれば研ぐ前に「面直し」しましょう。
▲面直し砥石
砥石は使っていると真ん中がへこんできますので、「面直し砥石」と呼ばれるものでこすって平らに慣らしてやります、これもAmazon等でめっちゃ売ってます。適当に一個買いましょう。
いざ試し切り
それではバッチリ研げましたので、こちらのトマトくんで試し切り。
この切れ味を伝えるため、TVショッピングバリのスーパー薄切り。
やばくないですか、完全に透けてます、すっけすけ、プレパラートにのせて顕微鏡で見たいやつ。
すばらしい、ではお次に長ネギいってみましょう。
白髪ねぎも鋭く仕上がります。
うーん、超切れる……いつ買ったかわからないようなナマクラ包丁が、ちょっと手を掛けることであっという間に再生どころかポテンシャル120%のオーバーエンチャントできるなんて、こんなやりがいに満ちた行為が他にあったでしょうか。
あまりに気持ち良く、調子にのってボール一杯。
いつが研ぎ時?
「切れなくなったら」とは言うけど、自分としては「玉ねぎを切ったら目に染みた」タイミングをひとつの目安としています。
これは、切れ味の良い包丁だとスッパリ細胞を断つので、目に染みる硫化アリルという成分が飛び散りづらいのに対し、切れない包丁では細胞を押しつぶしてしまい、硫化アリルが飛散しやすくなるために起こる現象らしいのですが、これを基準のひとつとして、玉ねぎを切った際「目に染みてくるな……」と思ったら「……時は来た」と判断し、研ぎを始めるのが吉でしょう。
どうぞご参考に。
チートのご紹介
なかには「角度を固定するの、クッソむずい、マジ無理」って方もいらっしゃるかと思います。やっているうちにすぐ慣れてくるのですが、どうしても難しいなと思われる方にはこんなチートアイテムもあります。
▲包丁研ぎホルダー
これを包丁にかますことで簡単に一定の角度でロックできます。
自分の好きな角度に調整することはできませんが、包丁研ぎの難易度が大幅に下がりますので、難しいと感じる方は積極的に課金すると吉です。Amazon等で適当に買いましょう。
てかこの記事、銭ゲバとしてはこのあたりでAmazonのアフィリエイトリンクをめっちゃ張りたいんですが。編集部さーん!! 見てるー!?
まとめ
- 包丁研ぎにはQOLをぶち上げるさまざまな効能が
- 意外と簡単
- 包丁研ぎホルダーを使えばさらに簡単
なんとなく難しそうというイメージが先行していており、そもそもやったことがないという人が多い作業ではありますが、怖がらずぜひ一度チャレンジしてみてください、本当に拍子抜けするくらい簡単です。
このように我々のまわりには「やってみると意外と簡単なこと」が山ほどあります。
包丁研ぎに限らず、仕事、家庭問わず、我々の長い人生におけるさまざまな事柄においてもこれは同様です。
ほんの少しのチャレンジ精神が人生を豊かにする。そんな大切なことを、この一台の砥石が教えてくれるのです。
もしあなたがほんの少しでもパッとしない人生を送っていると感じているのならば、先の見えないほの暗いトンネルから抜け出せずにいると感じているのならば、そんなあなたを救うのはたった一台の砥石かもしれません。